面接で盛った結果のデスマーチ

就活に失敗し、フリーターをしながらいわゆる同人活動としてゲーム制作をやっていました。 受け持っていたのは企画とシナリオライティングで、ライティング自体にはそれなりの自信があったのですが、実際のところ企画は一緒に活動していた仲間によるものがほとんどでした。

ゲームのシナリオは大まかなプロットを考え、それを元に実際のシナリオをライティングします。 そのプロットはシナリオ担当か企画担当が考えるものなのですが、自分はシナリオライティングは経験を積んでいたもののプロットの作成などは協力程度で、自分で一から組んだことはなかったのです。

そんな時、自分が気に入っていたゲームブランドの公式サイトを見ていると、シナリオライター募集の求人が載っていました。 これはチャンスと、過去に同人で出したゲームをサンプルに応募し、何度かのやりとりの結果面接にまでこぎ着けました。 そこで、自分が好きなゲームブランドのスタッフになりたいという思いに負け、つい盛ってしまいました。 自分がそのゲームでやったのはほぼシナリオライティングのみでしたが、企画やプロットの相談を仲間から受けて色々と話をしていたので、企画やプロットにも関わったと言ってしまったのです。

実際、ゲームの方のスタッフとしてはシナリオ以外に企画協力としてクレジットされていたので、全くのウソというわけではなかったものの、確実に盛り過ぎでした。 しかも、ゲームのプロットや設定、企画意図などは仲間から十分聞いていたので尋ねられても何とか答えることが出来、面接ではばれずに済んだのです。

結果自分は採用され、さっそく開発中のタイトルのシナリオライティングを一部任されました。 シナリオライティング自体は慣れていたので普通にこなせたのですが、そこで使える人材だと思われたのが問題でした。 シナリオライティングはちゃんと出来る。つまり面接で言ったことはウソではない。 ならば企画やプロット制作もちゃんと出来るだろうから、次のタイトルからはそっちも任せよう。 何故か次のタイトルでは企画スタッフのひとりとなり、企画とプロットを一から考えることになってしまったのです。

もちろん先輩方からアドバイスは貰えましたが、まともに企画を立てたことなど実は一度もないのですから上手くいくはずがありません。 最初の企画なんて上手くいかない方が普通だと言われながらも、企画と平行してシナリオライティングの仕事はしなければいけない。 ふたつの仕事を同時にこなすデスマーチ状態が続きます。

企画が通らない、企画が通ってもプロットがくめない。プロットが組めないので企画が差し戻される。 そんなことをやっているとこれだけは出来ていたシナリオライティングにまで悪影響が出て、作業が遅れがちになってしまう。 そんな日々が続いて心が折れかけ、とうとう上司に面接時のあれは盛った話でしたと自分から告白してしまいました。 しかし上司は「そうじゃないかと思ってた」とあっさり言ったのです。 その上で「一から作ったことはなくても企画に関わったのは事実なんだろう? それなら経験ゼロじゃないぶんまだいいよ。こっちも最初からちゃんと出来るとは思ってないから頑張れ」と言ってくれ、企画スタッフにはおいたまま、作業の中心をシナリオライティングに移してくれました。

そのお陰でだいぶん負担が減り、シナリオを書きながら企画やシナリオ担当の先輩方にお話を聞いて勉強する心の余裕を持つことが出来ました。 結局、自分の企画が通り、プロットも組めたのはそれから数タイトルをリリースしたあとのことでした。 理解のある周囲のお陰で会社に大きな迷惑をかけることなく勉強する機会を貰えたので上司や先輩には感謝していますし、いまでも頭が上がりません。