ペーパードライバーを隠したことで

私は本来はまじめな性格です。ですからさらっと嘘をつくタイプではありませんでした。しかしこのときはどうしても早く仕事を見つける必要がありました。だからあんなことを適当に言ってしまったのです。私はそのとき、家を追い出されそうになっていました。以前の仕事がうまくいかなくて何も考えずにやめてしまいました。すぐにでも次の転職先を見つけるはずだったのに、それがうまく行かなくて家賃を支払えませんでした。それが何か月か続いたころに、直接大家さんにあと数3か月の間に出て行ってほしいと言われたのです。だからそれまでにマンションの家賃を支払う必要があったのです。

すがる思いで転職先に選んだのは、図書館の仕事です。給料もなかなか良かったので、この仕事が決まったら何もかもうまくいくと思いました。前日には神社でお参りして、絶対に受かるために面接も何度も練習しました。そして本番に臨んだのです。面接で困った質問が来たのは中盤あたりです。緊張してがくがくしているときに、思わぬ質問が飛んできました。私は自動車の免許を持っています。しかし免許は持っていながらも、ほとんど車に乗っていなかったため、ペーパードライバーでした。履歴書に書いたときに心配になって、ハローワークに確認したら「図書館だから車に乗ることはそうないでしょう。」と言われたのです。だから安心していました。

しかし面接のときに私は車の免許のことを聞かれたのです。車の免許証を持っていないか聞かれて、私は素直に「持っています」と答えました。実際に持っているからです。そしたら面接官の人はほっとして「じゃあ運転できるね」と聞いてきました。私は笑ってこれをごまかしました。雰囲気から感じ取ったのですが、運転できないと言ったら印象が悪くなると思いました。絶対にこの仕事に受かりたかった私は車が乗れることにしてしまったのです。この時はとにかく採用されたい一心だったので、そう言うしかないと思っていました。でも面接か終わって帰り道に、ずいぶん落ち込みました。あそこできちんと「ペーパードライバーなので乗れません」と言うべきだったんじゃないかとずっと悩んでいました。

こうして日が経ち、数週間後に通知が来ました。封筒が小さかったので、おそらく不採用かと思って、実家に帰る準備をしようかと思いました。しかしこれが採用通知で、私はこの職場に採用され、ギリギリでなんとか家賃を支払えました。しかしその代わりに、とんでもないことをしてしまったのです。

運が悪いことに私が職場に選んだ図書館は、入社したときには閉館して改装工事をしていました。ですから作業をするのは遠くのほうの公民館を使うしかなくて、社用車を使って公民館まで行っていたのです。面接で車に乗れることになっていた私は、車を運転することになりました。本当に怖くてぶるぶる手が震えました。この時に正直に「乗れません」というべきだったのです。でも私はそれが言えませんでした。なんとかペーパーながらのろのろ運転してから公民館には着いたのですが、バックの時に気づかずに止めていたバイクを倒してしまって大騒ぎになりました。バイク何とか無傷で、バイクの持ち主の人も心から謝ったら許してくれました。ただ私がペーパードライバーであることがバレてしまって、それ以来別の人が運転して公民館に行くようになりました。本当に迷惑極まりないことをしてしまったのです。

バレた後はまるで針の筵状態だったので、本当に辛かったです。いろいろと陰口も言われました。でもそれでも仕方ないと思いました。私が車を乗れるとごましたのが一番悪かったのです。この汚名をどうにか晴らすために休日にひたすら運転の練習をしました。そしてやっと近場なら乗れるくらいに運転技術が上達したのです。今は図書館の改装工事が終わってオープンしたので、公民館までは行きません。でもたまに用事があり、社用車を使うことはあります。いろいろありましたが、やっぱり面接での質問は素直に答えるべきであると学びました。ただこのことがあって、運転ができるようになったのは一つプラスになったと思っています。